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やすらぎをくれた人

もう幾度目かの夜がくる。
この世界の夜はとても暗くて、月だってほとんど見れるかどうか。
星もなかなか見えずらい空。
それでも、こんな空でも。誰かの安らぎになっていることは間違いない。

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鳥かごの中に囚われた私は、勝手に外に出ることは叶わない。
出るときは鷹人にことわらないといけないし、基本的に監視がつくし。
それでも今までは、自由にとまでは行かなくても、外に連れ出せてもらえたのだ。
今までは、レインに。
けど、この前のことがあってから、彼は全然姿を見せない。
といってもまあ、まだ2日しかたっていないのだけれど。
最近は問診なんかもないし、本当なら私に構っている時間なんてないはずで、彼も仕事をしているはずなのかもしれない。
……………でも。

「それでも…毎日顔を出してくれてたわね…。」
「誰がですか?」
「…っ、キャッ?!」
「そんな驚かないでくれませんか…耳が痛いので。」

後ろを振り向けば、ドアの傍に円が立っている。
凄く凄くかわいげが無くなってしまったけれど、それでも彼は円なのだと言わざるをえないし、今ではなぜか素直にそう思えている。

「…ノック、してよ。」

彼と同じようなことをしないで欲しい。考えざるをえなくなってしまう。
つらく、なってしまう…。

「ノックしたけど貴女が…って、ちょっと撫子さん?泣いてるんですか?」
「私…泣いてなんか…?」

ふと頬に触れる。円の言うとおり、そこには濡れた感触があって、それに含まれる塩分のせいで敏感な肌がピリ、と痛む。
私はなぜ泣いているんだろうか?
彼がいないから。彼ってだれ?
レイン。飄々として捕まろうとしない、おかしな人。だけど。
私の、とてもとても愛しい人。

「…先輩なら、自分の部屋に籠ってますよ。
仕事はしてますけどイライラしてて面倒なんで、貴女なんとかしてきてください。」
「え、まどか、」
「ほら、はやく。」

ぐい、と腕を引っ張られ、外に出される。ドアは閉められてしまった。
何も考えられなくなった頭で、私は彼の部屋に足を向けていた。
自分の中で強く強く根付いてしまった、この想いだけを持って。
空には、珍しく月が綺麗に見えた。

------気づいた。誰が大切で、私に必要なのか。-----
レイ撫第三話。撫子視点。
■例の番外編ではアリマセーーーーン_(:3」∠)_
お題:「群青三メートル手前」より